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数歩うしろに感じる忠臣の気配だけが心の支えだ。
さすがにここで立ち回りを演じるわけにはいかないが、その大柄な体躯は、相手に威圧感を与えるだろう。
『アルフォンスの犬』とも陰口を叩かれる部下は、王都を包囲する大軍との停戦交渉という危険な任務に赴く主人にたったひとり付き従ってくれたのだ。
「カインとお呼びください、アルフォンス殿下」
「あ、ああ……」
ずんずんと距離を縮めるカイン王に、アルフォンスは無意識の動きで上体だけを後方に引いた。
だが、王は無慈悲だ。
つと──伸ばされる手。
軍事的に優位に立つ者の驕りか。
その指は無遠慮にアルフォンスの黄金の髪に触れた。
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