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くちゅくちゅと音をたてて下唇をついばまれ、グラリ。
足から力が抜けた。
細身の身体を支えるように、カインの手がアルフォンスの腰に回される。
やがて、熱の固まりのような舌がアルフォンスの唇を割って押し入ってきた。
愛撫するように舌先を突つき、奥へとねじ込まれる。
上顎をぬるりと弄われただけではない。
暴君の舌は真珠色の歯列を丹念になぞった。
突然のカイン王の暴挙に双方の配下がざわつくが、アルフォンスの耳には届いてはいない。
「はぁっ……はぁっ……」
ようやく身をよじって王の腕から逃れると、右手の甲で乱暴に己の唇を拭う。
初めての感触に怯えたか。
翡翠の双眸は潤んでいた。
「なんで……無礼だ。俺はレティ……」
なんでこんなことを。
いくら軍事的に有利な立場だからといって無礼だろう。
俺は古王国レティシアの王弟だ──そう言いたいのであろうが、乱れる呼吸がアルフォンスの言葉を殺す。
かわりに囁いたのは、無体を強いた王であった。
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