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はじまり
その夜、私はいつもと違う高揚感に包まれていた。ネットで見つけた儀式の手順を、好奇心だけで実行した結果がどうなるかなんて、考えもせずに。
床に描いた奇妙な模様、灯したロウソクのゆらめき…薄暗い部屋に漂う不思議な香りと静けさが、じわりじわりと肌にまとわりつく。心のどこかで「これがうまくいけばいいな」なんて、ほんの少しだけ期待していた。
「……これで、いいんだよね?」
半ば疑いながらつぶやいたその瞬間、部屋の空気が突然変わった。重く、ひんやりとした空気が流れ込み、まるで部屋に何かが入り込んだかのような感じがした。肌に鳥肌が立つ。
視線の先に、薄暗い闇が渦巻き、そこから小柄な影が現れた。白い髪と、異様に整った中性的な顔立ち。特徴的な紫の瞳が、ロウソクの炎に揺らめいている。
「こんばんは。」
軽やかな声とともに、その影はふわりと現れて私に微笑んだ。子供みたいな小柄な姿だけど、ただの人間ではないと一目でわかる。不思議と恐怖は感じなかった。
むしろ、何かに引き寄せられるような感覚がした。まずは自己紹介でもしてみようかな….?
「……えっと、透空…私は八神透空っていうけど…あなたは?」
緊張で声が裏返りそうになるのを抑えながら、私は名乗った。すると、彼女はふわりと笑みを浮かべて
「僕の名前はリベラ。よろしくね〜」
と名乗る。その瞬間、胸の中にざわめきが広がった。これまでの平凡な毎日が、彼女によって一変する。そんな期待で私の胸の中はいっぱいだった。
こうして、私の日常に「非日常」が滑り込んできた。
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