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初めて公開された情報を見た時の感想は「なんだこりゃ」。
リアルな状況を全く想像出来なかったけれど。
とうとう担当エリアでも、通報があったのだ。
保健師の恵は、興奮で頬を紅くして2人を振り返った。
「来た来た来たあああ!
100人目のふわふわ病だっ!」
「まだ診断は確定してませン」
「あんな特殊な症状、見間違う訳無いだろ」
デスクの上には3Dホログラムの球体が浮き上がり。
AIの定はくるくる回転しながら、恵と会話する。
そこへ電磁音と共に、ロボットの戒が機材を抱えて入って来た。
「急ぎまショウ。
認定が遅くなって101人目になってしまいマスヨ」
面を十文字に動く視線のような光が、恵には笑顔に見える。
戒とは長い付き合いだから。
気のせいかも知れないけれど、ご機嫌が判るつもりだ。
昔ならそんな関係を『家族』と呼ぶのだろうけど。
今の時代、国だの人種だのと線引きは無くなり。
ニンゲンは皆が独りで。平等に共存している。
労働をロボットに託し。
思考をAIで洗練する。
そうやって何とか。
人口と健康を限界まで減少させても、生き延びて来た。
高等医療と遺伝子操作で、長寿にはなったけれど。
培養組織やチップを埋め込んだツギハギな身体。
恵も、機能しない眼球の代わりにゴーグルを着けている。
普通なら人口眼球へ取り替えるけれど。
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