くものいと

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なんとなく、メガネとかゴーグルとか。 レトロなアクセサリーも気に入ってるし。 置換手術は受けていない。 そんな身体欠陥の助けとして。 恵は子供の頃から、ロボットの戒がそばに居る。 ロボットを持てるニンゲンは、限定されているけれど。 定のようなAIは、誰もが生まれた時から与えられる。 情報統制が完璧な世の中なので。 役所も警察も存在しない。 その代わりに、与えられたAIが。 相談相手で保護者で理解者で指導者になってくれる。 ニンゲンの性格に合わせて、特性形成されるAIだからこそ。 友人とか家族とか相棒とも呼べる存在になり。 誰もが、安全で安心で穏やかに暮らせるようになった。 だからもう。 無駄な争いや理不尽な感情で不幸になるニンゲンはいない。 そんな日々の中で突然、奇病が報告された。 それが通称ふわふわ病。 ある朝、起きて来ないニンゲンの布団をめくると。 繭のようなふわふわしたモノが乗っていて。 2・3日経つと解け、すうっと1本の糸になって空へ昇って行く。 その様子を小説『蜘蛛の糸』になぞらえて。 お釈迦様が垂らした糸が巻き戻るようだと言われている。 そんなお伽噺扱いにするしか無いほど。 病原体も感染経路も、もちろん治療法も。 全社会を統べる中央AIでさえ、未解決の事象なのだ。
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