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新聞を横に置き、アシュリーはドレッサーの中を漁りだした。シャツ、ズボン、スーツ。シャツを取り出して自分にあてがい、サイズ感を確認する。遠くでボサッと音がしたように思うが、屋根から落ちた雪かもしれない。耳をそばだてながら、今着ている物を脱ぎ始めた。
「何をしてる」
アシュリーは弾かれたように振り向いて、佇んでいるジェームズから痩せた身体を隠した。
「き、着替えをお借りしたくて。洗いたかったから……」
言い訳をするアシュリーよりも、ジェームズの興味は露出した肩や鎖骨にあった。その瞳に欲情をみて、アシュリーは唾を飲み込んだ。
「俺が薪を運んでいる間に出ていけばよかったものを」
手袋を外し、素手になった右手でアシュリーの頬を撫で、その手で肩の線をなぞった。
「こんなところに男と女しか居ない。その状況でこんな無防備な姿。手を出されても文句は言えないが?」
既にもう片方も手袋を外し、空いてる方の手でジェームズは着ていたものを脱ぎ捨てていく。
「でも、何日もあなたは手をだしてこなかったわ」
アシュリーは自分の身体に触れている大きな手を掴んで、唇を寄せた。
「助けてくれたその日から私はあなたのもの」
目と目が絡んで、ベッドになだれ込んだ。アシュリーは激しく求めてくるジェームズに、やっと全てを手に入れられたのだと感じていた。ジェームズ•ダグラスも、そのジェームズが持つ巨万の富も。
「愛してるわ。ジェームズ。助けてくれてありがとう」
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