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 来世へと俺の魂に刻みつけられた多くの欠片は、ある女へと集約されていく。   貧困社会で育ち、唯一の持ち物であったその身をひさぐことでしか生きるすべを知らなかった女。あるときは、斜陽の国の王族の端に生を受けたために高貴なだけで何も持たないその身を、人身御供のように辺境の蛮族であった俺らに捧げられた娘。また別の時には、俺と血を分けた妹であり……。  どんな時代であっても、どのような関係性であっても、俺が見いだした女は、俺からの惜しみない援助と愛を貪欲に享受した。  より贅沢でより豊かな人生へ。  女は男を惑わす妖艶な美女へと階段を駆け上がっていく。  その変貌の過程は見事なほどあでやかで、俺は転生の度に魅了された。  俺たちは深く激しく愛しあった。  泥濘にわくメタンガスのあぶくのように醜く膨らんでははじけ散るのを待つだけの退屈な俺の人生に、強烈な色彩を与えてくれる女。  みてくればかり気にしている妻ではありえなかった。  俺の人生の最高傑作、真の愛。  今生の女がいったいいくつなのか、どこで何をしているのか、なんて名前なのか、俺は知らない。  だが、何かを求めてやまない渇望と野心が煮立つようなその双眸を見れば、俺はすぐに女を、俺の女だと同定できるはずだと確信している。  幾十にも重ねた転生の果てに、俺とあの女の魂は分かちがたく絡み合っているのだから。    そしてつい先日。  リゾート地再開発地区予定地として白羽の矢がたった山間の人気のない港町の、雪がまだらに残る山際の、古びた旅館の離れに通されていた。  俺たちの後からにじり入ったのは、どこにでもいそうな若さを失ったためにくたびれた印象を与える女。薄い肢体に化繊の着物をまとう。  同僚に美羽姉さんと呼ばれていた。
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