7. 翻訳される心*

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 オーディエンスが緩く「いえーい」と声を掛け、和やかな空気だ。良いところで合いの手のようにドラムが鳴った。 「連れて来られたお友達もありがとうございます。そうじゃない人も、楽しんでいってくださいね。全部カバーなので、知ってると思います。折角だから、男子は帰りに女子に声掛けてどこか行ってもいいね」 「チャラいぞー」とまたオーディエンスが声を上げる。それを聞いてみんな笑っていた。私もつられて笑った。  なるほど、このライブをきっかけに普段は話さない子と仲良くなったりするわけか。そういう場を提供しているわけだ。一曲目を聴いたあと、恥ずかしながら、ちょっと青春っぽいかも、と思った。あんな演奏を聴いた夜に、恋に落ちてみたい。 「先に言っておくと、俺は彼女募集中です。モテたくてバンドしてるのに、このままだと彼女、できないかもしれません。助けてください。このあと、声かけてくれたら嬉しいです」
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