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『情いらないよ』
絶望という言葉を使うなら、きっとこの瞬間だろう。あたしは、この世で1番信じられない人を信じようとした。
けれど……拒絶された。信じようとした自分がバカだったこと、母とはもう分かり合えないということを、初めて示したほんの僅かな愛着によって知った。
両親の2度目の離婚の話が出たのは、この時だけではない。2度目は、1度目の時から約1年後――あたしが専門学校への入学を控えていた頃のことだった。
今回、母はいつも以上に本気だった。泣きながらあたしにすがり、「一緒に暮らそう」と言ってきたけれど、あたしは断った。「もう一緒には暮らせない」と何度も言ってきたのに、今更承諾できるわけがない。
その後、週末の夜に家族で話し合うことになり、あたしも2度目の離婚と自立を覚悟した。しかし、時間が合わず話し合いは延期となり、気づけば1週間が経過していた。
離婚は親同士の問題だし、自立するあたしにとっては全く関係ない。しかし、どうするのかだけでも聞いておきたくて、母に尋ねた。すると、母は笑いながら答えた――「仲直りしたわ」と。
あたしは思わず、「うわ、キッショ」と零した。今思えば、もっと別の言い方があっただろうなと反省している。笑っていた母は豹変し、「こっちはこっちで話し合ってたの!」と怒り出した。
けれどあたしからすれば、親同士でキチンと話し合いもしないまま、子供に対して簡単に離婚を口にする方がおかしい。弟や妹の不安を煽るようなことをしておきながら勝手に仲直り、そしてそれを知らせてくれなかったどころか、ヘラヘラと笑いながら説明してきたことに憤りを感じた。
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