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チャプター01
「このみちゃん。最近、肌の艶が良くなったんじゃない? お化粧かえた? もしかして彼氏、できた?」
陰キャで誰とも馴染まない私を気遣ってか、バイト先の女店長は今日もセクハラばりに話しかけてきた。
「特に何もー」
この質問に対しては、彼氏ができたと両手を広げ大声で言いたかった。今までの私と違う、全身で幸せアピールをしたかった。でも、そんなことをしたら店長は絶対夜のことを聞くタイプの人だ。
「そうなのー。ちゃんとお洒落すれば綺麗なのに」
こちらを見ることなく、胸に抱えた端末で在庫チェックをしながら店長は去っていった。
ほっと息を吐くと私は今週末に思いを馳せた。癖毛の髪をストレートにして、人生初のコンタクトも作って理仁を驚かせるのだ。喜んでくれるだろうか。どんな風に愛してくれるだろうか。自分の頬が熱くなるのを感じた。きっと私はヤバいくらいニヤついてしまったに違いない。
慌てていつもの無表情に戻ると周りを見渡した。どうやら誰にも気付かれなかったようだ。危ない、危ない。そう思いながら私はニヤついた。
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