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チャプター03
「ねえねえ。あんな綺麗な子いたっけ?」
「飯塚さんでしょ? あれは絶対、男だよね」
入学当初にあった陰口が、また聞こえるようになった。でも内容は前とは真逆で気にもならない。ストレートにした髪を切り、眼鏡をコンタクトに代えると、最初は誰も私だと気付かなかった。そもそも存在を認知されていなければ変わっていないも同じだけど。
「サークル入ってる? タダでいいから飲み会来ない? 気に入ったら、入ってくれればいいから。ね」
見知った男子が、はじめましてで話しかけてくるのは可笑しかった。今だに普通にナンパしてくる人もいる。全員IQがちょっと高いだけの猿だ。他に使える頭がないから大学に入ったにすぎない。
バイトがない日は、休みでも大学に通った。そうしないとメイクもしないままダラダラして理仁を迎えることになってしまうからだ。外に出るとなれば髪もとかすし、メイクもする。
「あ」
付き合ってから初めて大学付属の図書館で理仁と会った。同じ大学なのは知っていたが、デレている自分を他人に見られたくなくて、あえて会わないようにしていた。
昼間に理仁と歩くキャンパスは、とても新鮮だった。夜に満足して、そんなこと考えもしなかった。それからは学食にも行くようになった。みんなの視線を感じるので、出来るだけ普通の態度を装った。その反動か、大学であった日の夜は、お互いの口を手で塞ぐくらい激しかった。
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