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チャプター04
理仁は私を助けた夜から、心配だからと時折来てくれるようになった。どうやら彼の中では自殺未遂扱いらしかった。
あの夜のことは、大学が一緒で私に憧れていたとか、たまたま見かけて声をかけそびれて部屋まで来てしまったとか、玄関の鍵が開いていたとか、そんな事を言われた気がするが正直覚えていない。だからといって改めて聞く勇気もなかった。酒で潰れた姿を見られているし、一応命の恩人だし、ただ来てくれるだけで心が休まった。
辛くなったタイミングで部屋に来て、私が眠るまで一緒にいてくれて、そしてそっと帰っていく。そのサイクルは変わらぬまま、私たちは付き合いはじめた。
私が唯一自分を解放できる時間。私が唯一性を曝け出せる相手。運命としか思えないほど、私たちの歯車はピッタリだった。そこに滴る潤滑油まで。
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