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チャプター07
掌からこぼれた薬が、床に当たりリズムを刻んだ。よろめいて上手く立ち上げれない私を、理仁が両脇を抱えて優しく持ち上げてくれた。そのまま私は理仁に抱きついた。
「理仁……。話したい事があるの」
久し振りに胸に抱くその存在を堪能しながら、私は理仁を知ろうと口を開いた。でもすぐにジャケットの中に入ってきた腕が、私の背中を抱き寄せ、絶妙な拘束に腰が抜けそうになる。
「理仁、聞いて?」
話をするため体を離そうとするけれど、理仁は私を離さないままベッドに運んだ。
「あ、はっ」
快感が全身を駆け巡り、足の間に埋まった理仁の頭を掴んだ。このまま果ててしまいそうだった。
「理仁。理仁。あなたは。誰なの」
私は漏れる吐息に、なんとか言葉を乗せた。理仁が顔を上げるのがわかった。
「このみが僕を呼んだんだよ?」
胸を撫で膨らんだ先端を指先で転がしながら、理仁が私の顔を覗き込んできた。
「私が、呼んだ?」
「そう。だから僕はいつでも君に応えた。なのに最近、僕を疑ったでしょ」
「んっ」
ゆっくりと理仁が中に入ってくる。私の反応を確かめるように理仁の顔が上下する。いつもは影になって見えない理仁の顔が、今夜は鮮明に見えた。飛びそうな意識の中、それはコンタクトを外していないからだと気が付いた。
理仁の睫毛が上を向いた。私を見つめる瞳。瞳の中の。
「いや!」
一気に意識が覚醒して、私は思わず理仁の胸を突き飛ばした。その瞳に私が映っていなかったから。
両手で突き飛ばしたつもりが片手だけを上げていた。もう一方の手は私自身の中に指を忍ばせていた。そこに理仁の姿はなかった。
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