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プロローグ
オレ・アキトの住む街には住民達に人気な喫茶店がある。その名も「喫茶けだもの」。古き良き哀愁漂うレコードプレーヤーから流れる昔に流行した曲と、町の人の他愛ない世間話をする声が店内を賑やかにする。仕事に疲れた人は、注文したコーヒーそっちのけでうたた寝をしていたり、アルコールの入った飲み物を手に酔いつぶれたりもしている。そんな客を見ても店主はいつも笑顔だ。
店主に世間話をしに来る人や宿題自主勉を進める空間を求める学生もやってくる。店主は世間話に対しては客に負けず劣らずの会話術で客を魅了しながら、宿題自主勉をしに来る学生には問題のヒントや人生の術を教えるなど、親切かつ楽し気に対応しながら喫茶の営業を進めている。今日この時も街の人がくつろぎのひとときを過ごそうと立ち寄っていて賑わっていることだろう。
オレはそんな喫茶店「喫茶けだもの」がある街の木洩日丘(こもれびのおか)高校という高校の二年生だ。木洩日丘高校ではよくウソかホントか出元が不明の噂が流れる。その噂の一つに「喫茶けだもの」についての噂もあり、街中では人情の溢れる明るい雰囲気によってかき消されているとされている。その噂というのは、夜遅くまで居座り続けてしまうと店主に喰いつくされるのだという噂だ。この噂を信じるものは最初そんなに多くなく、オレたちもそんなわけがないと思っていた。
そんなオレたちはこの後、不可解な事件に直面することになる。
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