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男二人で暮らし始めて三ヶ月になる。
雨の夜に、ずぶ濡れの來人を僕が家に連れて帰ってからだ。
行くとこがないならおいで
自分に言い聞かせるようにして三匹の猫を拾い、萎れた観葉植物を貰い受けた。友人は多いけど、同性にしか恋をすることが出来ない僕は、他人と違う自分にいつもどこか寂しさを抱えていたのだと思う。
保育士という仕事柄のせいか、誰かの世話を焼くのは全く苦にならない。毎日彼らにせっせと話しかけてごはんや水をあげると、自分が注いだ以上の愛が返ってくる。僕はそれに癒されて何とか日々を過ごしていた。
猫みたいだ
初めて來人に会った時もそう思った。だから気軽に家に上げてしまったのかもしれない。彼は雨に濡れて震えているのに、僕をじっと睨みつけていた。切れ長の目には秘めた力があり、僕が信頼に値する人間かどうか見極めているようだった。
『風邪ひくよ。ともかく今夜はうちへおいで』
道端に座り込んだ來人に傘を差しかけると、何度目かの説得のあとに、彼はひったくるように僕から傘を奪った。ほんの一瞬、雨粒が僕の顔にかかったが、その雫はすぐに傘を弾く音に変わった。青い布地越しに、彼の顔色がいっそう暗く見えた。
『ありがとう。背が高いんだね』
黙ったままの彼と並んで歩き出した。
拾ってしまった…
子猫ならまだしも立派な青年だ。それでも、僕が彼に感じたのは庇護欲だけだった。たとえどんな状況でも、孤独を持て余しているのを放ってはおけなかったから。これは僕の自己満足に過ぎない。ほんの一晩、泊めてやるだけだ。
だけど、三日三晩降り続いた雨が止んでも、來人は僕のそばから離れなかった。
『もう少しここにいてもいい? メシは作れないけど、他のことなら何でもするから』
荒かった口調の角が取れて、眼差しにやわらかい光が兆していた。
あの時、僕は自分のことを打ち明けるべきだったのかもしれない。だけど、住み込みの仕事を失って本当に行くあてのない彼に、かえって負担を強いる可能性もあった。別に彼に対してやましい気持ちもないし、自分が口を閉ざしていれば済む話だと思った。
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