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落ちぶれていった男と幸せを掴んだ女
「リュシア、お前との下らない夫婦関係も今日でやっと終わりだ」
夫婦となって五年にもなる夫、子爵エドモンド・ベレトンの言葉は私の心を掠めることすらなかった。ただ、いかにも彼らしい、見下すような態度に心で少し苦笑してしまっただけだ。
政略結婚で結ばれた私たちの間に愛など最初から存在しなかったのだから。
けれど、それはどうでもいい。
私は静かに問い返した。
「理由を伺ってもよろしい?」
エドモンドは唇を歪にし、嘲笑を浮かべる。
「理由? そんなもの、分かりきっているだろう。お前というつまらない女は結局どこまでも、何一つも魅力がない。……それにだ、俺には愛する人がいる」
そこまで言うと、彼は己の両手を叩いて音を出す。
まるで何かを呼びつけるように。とは比喩でも無く、本当にその合図で女性が一人執務室へと入って来た。
その女性、どこかの令嬢らしく、貴族としての最低限の品を持っていた。
が、その笑顔。勝ち誇ったようにギラついていて卑しく。不快感を煽る。
でもそれ以上に気になった部分がある。それは……。
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