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「もともと私たちは互いに愛してなどいませんでした。子供も無く、お互い望まない結婚生活から解放されるのなら、それに越したことはありません。」
冷静に答える私を見て、エドモンドの表情がさらに歪む。その意味はわかる、どうせ私が泣き喚く姿でも期待していたんだ。浅ましい男。
「せめてもの情けとして結婚時にお前の家から持ち込んだ持参金を返還する。それと、お前が持参した宝石も返してやろう。ありがたく思うんだなっ!!」
彼はそう言い放つと、勝ち誇ったように椅子にふんぞり返る。
が、その興奮した言葉。よほど私に涼しい顔をされたのが気に入らない。だから、体裁だけは保とうとしてもその言葉の端から悔しさが滲み出ている。
憐れな男。
「分かりました。ではありがたく頂戴致します」
私は表情を変えずに頷いた。これには素直に内心で安堵する。
家宝の宝石は亡き母が私に託したもので、特定の魔法がなければその真価が分からないように仕掛けられている。彼がその価値に気づいていないのは明らかだった。
見た目は唯の安っぽい装飾のアクセサリー。そのままに受け取ってくれて助かったものだ。
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