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「せめてもの忠告を最後にさせて頂きますが。今までこの領地の管理等を任されていましたが……私は此処を去る以上、早々に代理を見つけるべきかと」
「ふん! 何を言うかと思えば……。所詮それも私や母上が本来すべき事だったのだ。それを、怠けさせないよう躾ける意味でもお前にさせてやっていたこと。お前が居なくなった所で大して変わりなどせん!」
「……そうですか。わかりました、ならばもう何も」
面白くなさそうに鼻を鳴らすこの男。自分の身の程がやっぱり見えてないのだろう。
離婚の手続きも淡々と進み、私は持参金と宝石を受け取り、ベレトン家を去る日が訪れた。
屋敷の出口に立つと、義母であるクラリスがそれはもう満足げな表情で立ちはだかる。
「まあ、リュシアさん。最後に私たちに迷惑をかけることなく出て行くなんて、さすがは元は伯爵家の御令嬢だこと。でもよかったわね、これであなたも自由になったわ。これから先は、哀れな女にふさわしい人生を送るといいわ!」
勝利の高笑いを鳴き声が如く鳴らす。そんな彼女のいつもの嫌味はもはや耳障りにも感じない。これでその縁は切れるのだから。
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