落ちぶれていった男と幸せを掴んだ女

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 私が離婚後すぐに警告した通り、領地の管理や税収の処理を行える者がいなくなり、財政は悪化の一途をたどったらしい。  加えて、義母クラリスとエドモンドの新妻は揃って金遣いが荒く、必要な資金を浪費し続けた。  その結果として家門の財政は破綻に追い込まれた。  全て噂に聞こえてきた程度だが、恐らく大体は当たっているんだろう。  それから数年後のことだった。  私が街で日用品の買い揃えをしていると、ボロボロの服をまとったエドモンドが突然現れた。 「リュシア……俺が間違っていた。お前こそ本当に俺にふさわしい妻だった。今度こそ、俺とやり直してくれ!」 「あなたは……」  彼はそう言いながら、無理やり私の腕を掴もうとした。  そこには最早最低限の品性も無い。しかし自尊心だけは無駄に持っていて、やはりどこまでも歪な男だった。  その瞬間、威圧的な声が響く。 「下衆が、リュシアに気安く触れるな」  振り向くとそこには一人の男性――私の付き添い人である侯爵のアルフォンスが立っていた。
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