落ちぶれていった男と幸せを掴んだ女

8/8
前へ
/8ページ
次へ
 何かとうるさい実家の義母と義兄も、侯爵と縁が出来た私に対して今までの態度は何だったのかと言わんばかりにその腰を低くした。あの二人も、どこまでも俗物でしかないのだろう。  今、私は幸せだ。  愛しい娘を持て、本当に好きを伝える事が出来る男性と出会えて。  彼からの求婚を受け、新たな人生を歩むことを決意するのに一瞬の迷いもない。  そうして、ささやかな式を挙げてからしばらくのこと。 「リュシア、これからもずっと私たちと共にいて欲しい。君と子供の居ない生活は考えられない」 「私も、二人と離れたくありません。それに……」  アルフォンスの真摯な言葉に、私は静かに微笑み頷く。  自らの、ほんの少しばかり大きくなったお腹を撫でながら。  こうして私は、暗い過去を振り切り、愛する人と共に新しい生活を始めることができたのだ。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

78人が本棚に入れています
本棚に追加