1:朝の澄んだ空気に漂うその香りは……

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早朝。目を閉じ澄んだ空気を胸いっぱいに吸い込みながら背伸びをする。頭いっぱいに酸素を送り、今日も一日頑張りましょう!と一人、玄関前で喝を入れると、一度朝日に目を向ける。 「今日もいい天気!空気が美味しい!」 もう一度、うんと伸びをして吸った空気の中にほのかに花の香りを感じて周りを見渡す。 隣のお家の梅の木に花が咲いていた。 二月も終わりに近づき、間もなく三月。 今年の四月に大津中央高校に入学し、目まぐるしい変化にようやく慣れてきたと思ったら、二年生も目の前。 三年生が卒業し別れを惜しむ間もなく、新入生が加わって、新たな出来事に忙殺されていくのだろう。 「なんか、あっという間だったなぁ」 門を通り、通学路に立つ。ここを通るのもあと二年。もっと大切に歩いて行こうと、一歩踏み出したところで後ろから声をかけられた。 「おっ。引水さんだ。おはよー」 「おっはよー!引水さん!」 「あ!おはようございます!先輩!瀬田さん!」 かけられた声に振り返ると、同じ学校の一年先輩の大林賢治先輩とそのご友人の瀬田祐奈さんが並んで近付いてきた。
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