1:朝の澄んだ空気に漂うその香りは……

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「今日は早いんですね?」 「んー。なんか、友達に呼び出されたんだよね」 「なんか、怒られるようなことしたんじゃない?って、話してたとこ」 私は図書委員の仕事で、いつも早めに登校しているので一人でこの道を歩くことが多い。 先輩たちは慣れているのか、比較的ゆっくりと登校し予鈴頃に学校に到着している姿を図書室の窓からよく見かけていた。 「先輩が誰かを怒らせるところとか、あまり想像できませんけど」 どちらかと言えば、人のために東奔西走と駆け回っているイメージだ。 人のために動いている先輩が、褒められこそすれ、怒られることなんてあるのだろうか。 「いやいや、結構怒られてるよ。教頭先生とか生徒指導の先生とか、灰塚さんとセットで怒られてるもん」 「それ誤解だからね。ほとんど巻き添いなの。あいつが突発的に変なことするから、それを庇ってたら僕まで目をつけられるようになっただけだから」 「逆もあるけどね。霊とかにちょっかいかけられて慌ててるところを、灰塚さんに助けてもらったこともあったでしょ?」 「うっ!うぅ……た、たしかに…」 瀬田さんの鋭いツッコミにぐうの音も出なかったのか、先輩は悔しそうに顔を顰めた。 「そうなんですか……。先輩、人のために頑張ってるのに可哀想です」 「はは……!まぁ、怒られたっていってもそんなだよ。軽く注意された程度さ。騒ぐなーとか、その程度のことだよ」 「だから、あいつは全然反省しないんだ」と先輩が校門に目を向け苦笑を浮かべる。 そこには“灰塚望桃先輩”が鞄を手にしてこちらを眺めていた。何故か足元には縄で縛られたお地蔵様が置いてある。 随分とシュールな光景だ。 えっ?あれはもしかして、何処からか持ってきた物なのだろうか。
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