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「あなたの歌うMJの曲、どれもステキね。でも、あなたの年だとリアルタイムじゃないでしょ、どこで聴いてたの?」
「ボクの町では、今でもリアルホット20に入っているんだよ」
ぶっきらぼうに答える青年に
「MJがまだ生きている町なんて、あなたもアナザースカイ(あの世)から来たのかしら?」
とドラァグクイーンは笑った。
「キミの話はよくわかんないけど、故郷のヤキマではまだ流行っているのさ」
「まあ、異世界の町の名前。そこはどこのフェイクアース(偽地球)にあるの?」
「スポーケンの近くだよ。知らないかい?」
「あら? 聞いたことがあるわ、たしかノースコリアだったかしら?」
「冗談じゃない! ワシントン州でシアトルの次に大きい街なんだぜ」
ドラァグクイーンは肩をすくめて
「どうやらあなたもホンモノの合衆国国民らしいわね、仲良くしましょう。それにしてもあなたの歌うマシューの曲、他の人のカヴァーと違って心に響くわ。本物の才能ね」
「キミがモータウンレーベルのプロデューサーだったら、今ごろこのケースの中にはリアルマネーがあふれていたさ」
寂しい楽器ケースの中を覗いたドラァグクイーンは、
「スゴイじゃない! 50ドル札が2枚も入ってる!」
「よく見てくれ、直接ケースにペイントマーカーで書いたニセモノなんだ。コインを乗せるとホンモノに見えるだろ、いわゆる見せ金ってやつ」
そこまで話していた所で、青年のお腹からマグマの地響きの様な音がした。
「合衆国為替金融物偽造違反犯人の、今夜のディナーは何かしら?」
「多分、アパートに残っているダイジェスティブビスケットと、半パイントのクェーカーオーツだよ」
「ついていらっしゃい。ギャラの代わりにご馳走するわ。近くに、プリカデッレが美味しいジャーマンレストランがあるの」
青年は田舎者だと思われるのが恥ずかしいのか、モジモジしながら
「プリカデッレってなんなんだい?」と小声で尋ねた。
「そうねえ、よく言ってソールズベリーステーキのニセモノってところかしら?」
2人は笑い合って握手をした。
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