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翌日、レジーが時間どうり『クラブ・ノックオフ』に着くと、エントランスでフォーニーが待っていてくれた。
クラブ内は、艶消し塗装の黒い壁に、金メッキの装飾を近未来的にアレンジしていながらも、1970年代のサイケデリックな芸術品が点在して、ドラッグにキマったようなカオスに溢れている。
いかにも現代のクィーンの居城にふさわしい。
「ブッチ。彼が電話で話したレジーよ」
ホールに案内されると、フォーニーにヒスパニック系の小柄な男を紹介された。
ニューヨークで流行の、テイクアウトスィーツの影響を腹回りに受けているブッチは、
「稼がせてやるぜ坊主」
とマフィンを持った手の反対側を、レジーの股間へ伸ばした。
「ストップ、ブッチ。彼はイーヴの代わりのミュージシャンよ。それにストレートなんですって」
「フォーニー。頼むから俺の前でくそったれイーヴの話をするんじゃねえ! 俺にフェイクスノーを押し付けてバックレた餓鬼の話を!」
「あら? どうやってフェイクって分かったの?」
「こうやってさ」
ブッチは、傍らに置いていたマフィンの袋を二人にみせた。
「今朝キメようと思ったら、ケイシーの奴がすでにマフィンにしていやがった。どうだい? これはこれでキマるぜ」
レジーは勧められたマフィンをほおばった。
「いいかい坊や、ここじゃフェイクもリアルも関係ない。今あることがすべて。ご機嫌に楽しむこった」
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