カフェ、幼馴染

1/1
前へ
/6ページ
次へ

カフェ、幼馴染

--・ ・--・ ・・-・- ・・・-  「ねぇ、律。 私のケーキ、一口食べたくない?」 「……はいはい。好きなだけどーぞ」 「え、なんでわかったの。 律のモンブラン狙ってるコト」 「美紅の魂胆なんて、もはや常識やろ」 「えへ。じゃあ、ありがたく。 いただきまーす…………美味(ウマ)っ」 「そらよかったなぁ…………太るで」 「う、うるさいなぁ。余計なお世話だよ。 『太っても美紅ちゃんは可愛いよ』くらい言えないの?」 「……ソレ言ってる脳内イメージ図、俺じゃないやろ」 「あ、バレたかぁ」 「……………バレバレすぎて、つまらんわ」 「(コッチ)のショートケーキは?食べる?」 「……いや、いい。 どうせ"明日"も食べることになるやろうし……あ」 「あ」 「……………………」 「……………そっか……うん、そうだね。 ………………ついに、明日かぁ」 「あー……。 話に出してもーたから、ついでに聞くけど…… 明日……式場までの行き方、わかるん?」 「うん。タクマくんに連れてってもらうから。大丈夫」 「……………ほんまに"大丈夫"?」 「うん……多分」 「そっか……」 「ねぇ……ありがとね、律」 「……なに、改まって」 「今まで、あえて話題にするの避けてくれてたんでしょ。 ……圭くんが結婚すること」 「う……いや別に……そんなんやないけど……」 「結婚式なんてさ、所詮"形式"だよね」 「……え?」 「そう…………ただの形だけ。 実際は……もう既に、2人は"家族"になってるんだよね。 たとえ明日、嵐がきても、雷が落ちても、槍が降っても……その事実は変わらない。 私なんかには到底手の届かないところに、2人はいるんだね。あ……もうすぐ"3人"になるか」 「………………」 「ほら、ね。すごいでしょ? 私……こんなに理解し(わかっ)てるんだよ」 「……うん」 「でも……目の前で、愛を誓い合う幸せな2人の姿を見た時……私は、どんなことを思うのかなぁ。 ちゃんと…………終わらせられるのかな」 「…………………ごめん。美紅。 上手い言葉、見つからん」 「あ、ううん……私こそ、ごめん。 困るよね、こんなこと言われても。 さ、早く食べちゃお。お店に迷惑になっちゃう」 「あ……あのさ」 「んー?」 「明日はさ…………みんな泣いてるはずやで」 「へ?」 「あの……ほら。 木を隠すなら森の中……とか言うやん。 明日は……"雷"や"槍"の代わりに、たくさんの"涙"が降るはずやから……」 「……から?」 「だから……その………… たくさんの涙の中に、どんな"理由"が紛れても…… …………例え、それが"祝福"とは違っても。 みんな、同じ涙に見えるから大丈夫……ってこと」 「えーと…………? つまり……"悔し涙を流せ"って言いたいの?」 「いや、そうやなくて………… "自分(美紅)自身のために泣いても、バレへんよ"って言いたかったの」 「え………………どんなアドバイス?それ」 「うっ……うるさいな……。 ……どうせ俺には向いてないですよ、慰め役(こういうの)」 「………………」 「………………」 「……………ふっ」 「……?」 「ふ…………ふふ……あはっ…………あはははははっ」 「笑っ……!? そ、そんな変なことは言うてないやろ!」 「いやだって……ふふ………励ましてくれるのかと思ったら………バレないって………あはははっ」 「くそ……慣れへんことするんやなかった……。 "ちょっとでも美紅の気ぃが楽になれば"って思っただけやのに……」 「はー………ありがと、律。元気出た」 「……もう絶対なんも言わん。今後。二度と」 「え、ごめんって。嬉しかったよ?」 「嘘つけ」 「本当だって! おかげで明日、無事に乗り切れそうだもん」 「……………………あっそ」 「え〜〜〜、怒ってんじゃん。 笑っちゃってごめんね?許してよ」 「……………許してほしい?」 「え、うん」 「じゃあ、条件」 「うわ、ヤな予感。肩たたき券の配布とか?」 「ちゃうわ。いつまでオカン設定引きずるん」 「じゃあ何?」 「明日さぁ…………」 「うん」 「やっぱり、泣かんといて」 「えぇ………………? さっきと言ってること違うじゃん」 「いや、誰も"泣け"とは言うてない。 "バレへん"って言うただけ」 「あ、確かに。 ……いや、そうじゃなくて。 なんで泣いちゃダメなの?」 「……見たないから。美紅の泣き顔」 「え、ヒド。いや、ヒド越してムゴ。 あ、ムゴイのムゴね」 「約束できるんなら、許す」 「約束できないなら?」 「え。うーん……。 じゃあ……美紅とはもうゲームせぇへん」 「えー。それは困るなぁ」 「子供(ガキ)やん」 「はい??なんで私が貶されてんの。 子供っぽい条件、提示してきたのは律でしょ」 「あれ。こないだも、こんなやり取りせんかった?デジャヴ?」 「いや、昔から口喧嘩(こんなん)ばっかりじゃん、私たちは。 まぁ、気も頭も使わないから、ラクで良いんだけど」 「ふーん……で?どうすんの。約束」 「うーん。とりあえず…………努力する」 ——————→→→→←——————
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加