プロローグ

1/1
前へ
/10ページ
次へ

プロローグ

『なんか、ごめん』 そう言った15歳の彼の横顔が、夜空を彩る花火の明かりにパッと照らされた。 大きな音が境内にも心臓にも響き、少し離れた場所から歓声が聞こえる。 浴衣姿の私は、巾着の紐をぎゅっと握りしめた。 なんとも居心地の悪い空気が自分のせいな気がして、ゆっくりとうつむく。 『こっちこそ……ごめん』 2年前の私たちは、それ以外に言葉を見つけることができなくて、そのまま別々の道を通って帰った。 まだ花火は終わっていなかったけれど、最後まで見ようという気にはならなかった。  
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

349人が本棚に入れています
本棚に追加