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友達はふと真顔になり、私にききました。
「あなたは本当に聖女ではないのですか?」
「違いますわ。噂については本当に困っておりますの」
ため息をついて伏し目がちに困っているアピールをします。こうして印象を作っておかなくてはなりません。偽聖女として検挙されたくありませんから。
「ほんっと、犯人見つけたらギッタギタにしてやる」
「ビ、ビオレッタ、口調が……」
「あら嫌ですわ、私としたことが」
ほほほ、と笑ってごまかしましたが、友人の顔がひきつっています。
なぜ私がこんな苦労をしなくてはならないのでしょうか。
誰が原因なのでしょうか。
本当に何かの力があるなら、真っ先にそいつを……。
そんなことを思っているときでした。
「お嬢様、踊っていただけますか?」
見たことのない金髪イケメンに声をかけられました。身なりからして格上の貴族です。
「え……」
戸惑ううちに手を引かれ、自然な流れでフロアへと導かれました。断る暇などありませんでした。
男性のリードで踊ります。
なんということでしょう。
今までにないくらい体が軽く、ふわふわと踊れました。まるで足に羽が生えたみたいで、夢見心地で一曲を終えました。
「ありがとうございます」
と男性にお礼を言われ、
「どういたしまして」
と答えました。
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