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お礼を言いたいのはこちらのほうです。久方ぶりに楽しいひとときでした。
去っていく後ろ姿に見とれていると、周囲の方から声をかけられました。
「さすが聖女さま、踊っているときに光り輝いていらして」
「え?」
輝いているとは、どういうことでしょう。
「まるで二人のダンスに神が祝福を与えているようでした」
とろけるようにうっとりと言う人もいます。
「言い過ぎですわ」
「みんな見てましたわよ」
初対面の令嬢が言いました。
友人がさらに驚くことを言いました。
「あの方、王太子殿下ですわよね。お忍びかしら」
「本当に!?」
私は王太子殿下の顔を知りません。しがない男爵の娘ごときではお会いする機会がないからです。
「蜂密のような金の髪、アザーブルーの瞳。絶対そうですわ」
アザーブルーとは空のような青色のことです。素直に空色と言えばいいものを、なぜか無駄にかっこつけるのが貴族というものでごさいます。
「噂の聖女さまに会いにいらしたのかしら」
含み笑いをしながら友人は私を見ました。
「私は聖女ではありません」
「求婚されるかもしれませんわ」
「ありえませんわ」
と私は答えたのですが。
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