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「殿下、誤解なのです」
おそろそおる、口にしました。
「誤解とは?」
「知らない間に噂が出てしまって、その、なんというか、私は聖女ではないのです」
怒られる、と覚悟して私は言いました。お叱りで済めば良いのですが、私が聖女を騙った詐欺師だと思われるかもしれません。ですが、このまま結婚に至れば事態は悪化します。知らず、体が震えました。
勇気を出して告白した答えは、意外なものでした。
「知ってるよ」
「はっ!?」
はしたなくも声が出てしまいました。
「知って……ご存知、とは……?」
「聖女の噂、僕がまいたから」
にこやかに殿下が言い、私は目が点になりました。
「一目見たときから君と結婚しようと思っていた。覚えてないようだけど、だいぶ前に君と会ってるんだよ。だけど君は男爵、地位が低いから普通は結婚できない。だからちょっと細工したんだ」
「細工って……」
どういうことでしょう。心臓がバクバクして、頭がクラクラします。
「過去、聖女は出生の身分とは関係なく王族と結婚している前例がある」
唖然としてしまって、言葉が出ません。
「だから魔法で君を聖女に見せかけた。君が歩いたあとに花を咲かせたり、香水を撒いたり、歌っていると鳥が飛んで行くようにしたり」
そんな小細工を!? っていうか、それもうストーカーじゃん!
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