偽聖女ですが王太子様と結婚することになりました!

8/8
前へ
/8ページ
次へ
「治療を希望する人には聖女からと言って薬や湿布薬を渡した。引きこもりのときは大変だったなあ。女優を雇ってあれこれしたんだ」  王子って意外に暇なの? って、そうじゃなくて! 「ダンスをしたときもね、魔法で光を漂わせて効果的にしておいた。みんなびっくりしてたね」  クスクスと殿下が笑います。  私はただただ呆然としました。 「僕がどんなに君を愛しているか、わかってくれた?」  もはやなんと言っていいのかわかリません。 「わかってくれたみたいだね」  沈黙をいいように解釈し、殿下はにこにこしています。  私が固まっていると殿下がそっと近づき、低くささやきました。 「聖女じゃないってバレたらどうなるか、わかっているね?」 「ひっ」  私はびくっとしました。  脅迫じゃねえかああああ!  叫べたらどんなに楽でしょう。  もし真実を告発したとして、王太子と男爵の娘、どちらを信じるでしょうか。  結果、私が偽聖女として罰せられるだけです。その場合、家族まで巻き添えになるかもしれません。 「わかったら、素直に僕と結婚してね」 「は、はい……」  私に断るという選択肢は消えました。 「よく顔を見せて。ああ、髪も瞳も、亡くなったママに本当によく似ている」  王子が私の両頬を愛おしそうに包みました。 「重度のマザコンストーカー!!」  我慢できずに、とうとう叫んでしまいました。  後日、私は正式に聖女に認定され、王子と結婚しました。  私は最後まで逃げることができなかったのでした。 〜 終 〜
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加