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「治療を希望する人には聖女からと言って薬や湿布薬を渡した。引きこもりのときは大変だったなあ。女優を雇ってあれこれしたんだ」
王子って意外に暇なの? って、そうじゃなくて!
「ダンスをしたときもね、魔法で光を漂わせて効果的にしておいた。みんなびっくりしてたね」
クスクスと殿下が笑います。
私はただただ呆然としました。
「僕がどんなに君を愛しているか、わかってくれた?」
もはやなんと言っていいのかわかリません。
「わかってくれたみたいだね」
沈黙をいいように解釈し、殿下はにこにこしています。
私が固まっていると殿下がそっと近づき、低くささやきました。
「聖女じゃないってバレたらどうなるか、わかっているね?」
「ひっ」
私はびくっとしました。
脅迫じゃねえかああああ!
叫べたらどんなに楽でしょう。
もし真実を告発したとして、王太子と男爵の娘、どちらを信じるでしょうか。
結果、私が偽聖女として罰せられるだけです。その場合、家族まで巻き添えになるかもしれません。
「わかったら、素直に僕と結婚してね」
「は、はい……」
私に断るという選択肢は消えました。
「よく顔を見せて。ああ、髪も瞳も、亡くなったママに本当によく似ている」
王子が私の両頬を愛おしそうに包みました。
「重度のマザコンストーカー!!」
我慢できずに、とうとう叫んでしまいました。
後日、私は正式に聖女に認定され、王子と結婚しました。
私は最後まで逃げることができなかったのでした。
〜 終 〜
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