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 咲ちゃんが蛙を踏んづけた。  彼女が靴底を階段に擦りつけている横で、僕は蛙の残骸が動いた気がして顔を近づけてみた。 「何か動いてる」 「やだぁ」  咲ちゃんが僕の肩越しにのぞきこむ。 「蛙の内臓とかじゃないよね」 「寄生虫かも」  散り散りの黒い残骸は僕らの見ている前でひとつに集まり、黒いナメクジみたいになった。 「触ってよ」 「やだよ」  二人で言い合っていたら祐君が話に割り込んできて、「こんなの平気だろ」と得意げに黒ナメクジを掴んだ。でもナメクジは溶けるように消えて、代わりに祐君の指先が黒くなった。 「祐君が寄生されちゃった」と咲ちゃんが言ってきたのは数日後。 「祐君のフリしてる別人みたい」と。
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