5章

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いつの間にか寝ていた美穂もちょうど目を覚ましたところだった。 私は美穂が起きたことを確認すると座っていたソファから立ち上がり美穂に 「誰にでも親切にしなさい」 と言い放った。 それからは私はできるだけ美穂を甘やかさず厳しく育てた。 わがままなことを言ったら必ず注意した。 その積み重ねで自分がいつか幸せを取りこぼすのだと教えた。 最初は上手くいっていると思った。 子供らしさを少し失う代わりに、美穂は確実に親切な心を持ち始めていた。 しかし私はそこで再び失敗をしてしまった。 その頃すでに私と美穂の会話は以前の半分以下に減っていた。 私がしつこく注意を続けたからなのか、美穂は私と好んで話そうとしなくなっていた。 私はそれでもかまわなかった。美穂が正しい大人になってくれれば私のことなど無視してくれてかまわない。本気でそう思っていた。 そんな時だった。 美穂が自傷行為をしてることを私は知った。 深く手首を切りすぎたせいで気を失った美穂は部屋で倒れた。 私はその大きな物音で異常に気づいた。 すぐに救急車を呼び運ばれた病院で私は娘を叱った。 どうしてそんなことをしたのか。何が気に入らないのか。
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