1章

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慣れ始めた『される側』からは大した感謝の意も向けられず、さも当たり前のように心のこもっていない感謝をされて、それでもその言葉に違和感を抱かずに納得してしまう。 いや、もしかするとあのスカスカの感謝の言葉ですら、親切にした事によって得られる褒美だと勘違いして優越感に浸っているのかもしれない。 そう考えると非常に滑稽で、親切にする側がおそろしく間抜けなやつに見えてくる気がする。 一体大人たちはこの現状を見ても親切にしろ。と自分の子供たちに言えるのだろうか。 そんな疑問を抱いていると『する側』の女子生徒と目が合った。 僕は気まずくなって目を逸らした。         * ああ、しまった。 休み時間に買ったコーヒーは僕の机の上から落ち、教室の床に匂いをつけながら広がっていった。 まだ二口程度しか飲んでいなかったこともあり、呆然と立ち尽くしていた。 周りの生徒といえば、自分の荷物だけ安全な位置に避難させる者、眉間に皺を寄せながら迷惑そうな顔を向ける者、そもそも気づいていない者、皆それぞれの反応を見せていた。 共通していえることといえば、我関せずという空気を纏っているという事だけだろうか。
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