1章

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しかし例の女子生徒『美穂』は違った。 僕が呆然と立ち尽くしている中、雑巾を持ってきてすぐに床のコーヒーを拭き始めた。 僕も我に返り床を拭こうと思ったが、僕が動く頃には彼女は床を綺麗にし雑巾を洗いに水道までいってしまった後だった。 僕は彼女のあとを追ってお礼を伝えにいった。 水道で彼女に追いつき、彼女に礼を言うと 「制服にかからなくて良かったね」と微笑みながら言った。 あまりに良くできた人間のような返答に一瞬面食らったが、すぐさま彼女はこういう人間なのだと改めて悟った。 もし仮にさっきみたいな事が僕の周りで起こったとしたら、僕からしたら迷惑千万だ。しかし彼女は違う。きっと誰が失敗しようと彼女はきっと一番に手を差し伸べるだろう。 礼など彼女からしたら、あっても無くてもどちらでもいいのだろう。 きっと彼女はこれが当たり前だと思っている。 ふと僕は尋ねてみたくなってしまった。 「君は何のために周りの人に親切にしてるの?」 彼女は面食らったような顔を一瞬見せ、その後顔を顰めながら首を傾げた。
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