1章

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「いや、ノートは自分で勉強しながら作ったほうがいいよ。」 やんわりと断られているな、と心の中で嘲笑したところで僕は目を疑った。 なんと断っていたのは美穂だった。 別に断ることくらい普通だとは思ったがどんな事にも手を差し伸べる彼女が、比較的ハードルの低いこんな事を断ることに違和感を覚えた。 「んだよノートくらいいいじゃんか」 必死に懇願していたが彼女は意見を曲げることはなかった。 頼む方も諦めたのか、不貞腐れながら他の人に頼みに行った。 ______一体、なぜ彼女は断ったのだろう。________      * 太腿に一本筋が入る。少しだけ刃が深く入りすぎたのか若干痛い。 いつもならこれで満足するはずなのに。 今日言われたことへのイライラがおさまらない。 __________自己満足かもしれないよ?__________ そんなの分かっている。核心に近いところを突かれた。私からしたら『親切』とは反射なのだ。 だから私はやりたくなくても他人に親切にしてしまう。 本当は私だってみんなと同じように他人任せにしたい事だってあるのに。 考えれば考えるほどイライラする。
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