ハッピーエンド

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 私は患者さんが出ていくのを確認し、ため息を吐いた。それを見た松宮さんは軽い苦笑を浮かべた。せいぜいコーヒー程度の苦味だ。それもアメリカン。    ここは御徳薬局。病院の発行する処方箋を受ける調剤薬局だ。  先程、松宮さんは認知症の御義母様を介護している義理娘さんに対応していた。  聞こえて来た会話からすると、義理娘さんは優しくない。  先日は嫌味の応酬では収まらず、怒鳴り合いに発展したそうだ。そして包丁を手にした時に我に返り、公園に行き頭を冷やしたらしい。このままでは殺してしまう、と。 「あの人、優しくありません」と私は言い、松宮さんを見た。きっと嫌な目つきをしているだろう。  松宮さんは「そうかもね」と前置きし「でも、やる事はちゃんとやってる。介護をしないくせに文句ばかり言ってる実の子供たちよりもずっと優しい」  そう言い切る松宮さんは私の目つきなんか気にしていないようだった。 「松宮さんは言うべき事じゃなくて、相手が言って欲しい事を言っています」 「そうだね」と松宮さんはあっさり認め、さらに「誰も不幸にはしていないよ」と言い、笑みを浮かべた。    こんな奴が白衣を着ていいんだろうか。  松宮さんは先輩薬剤師であり、私の指導係だ。
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