ハッピーエンド

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「お待たせしました、松宮です。どうしましたか?」と松宮さんはいつもの穏やかな声で対応していた。さっきまで寝ていたとは思えない声だ。 「あの、私、以前、こちらでお世話になっていた、梅山敏一の娘、山本と申します」 「梅山さん……最近、お見かけしませんが、どうかされましたか?」 「最近、父は体が弱ってしまいまして、受診が出来ないのです。それでお医者さまに往診をお願いする事にしたんです。それで、松宮さんにお薬の配達をお願い出来ないかと」 「在宅ですね。大丈夫です。お受けしますよ」と松宮さんは言い、手元のパソコンを叩いた。これはお薬のカルテを管理するPC、電子薬歴だ。 「梅山さんのお宅は……ご近所ですね。はい。では、明日、ご挨拶に伺ってもよろしいでしょうか?」 「ああ、良かった。父は松宮さんの事を気に入ってましたから、喜ぶと思います。それとお願いがあるんですよ」 「お願いですか?」と松宮さんは言い、首を傾げた。
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