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03. 魔女、子供と一緒に買い物する。
「子供服を何枚か見繕って欲しいんだけど」
村で二軒しかない洋服屋の一軒に顔を出す。もう一つの店は主に正装だったり、ハレの日用の布を取り扱っていて、普段着はこっちの店にしか置いてない。
「子供服は需要がないからねえ……。流行遅れでも構わないかい?」
ここは魔女たちが住む魔女の村だ。非魔女はほとんどいない。
そして魔女たちは個人主義が強く結婚願望を持たないことが多い。当然の如く子供も少ない。
「何だって今よりはマシよ」
「違いない」
待ってなと言いおいて店の女主人が奥に入り、大袋を二つ抱えて戻ってきた。
「百年は経ってないと思うけど。時間停止してあるから傷んじゃないよ」
次々と取り出される服に、子供たちは目を大きく見開いたままだ。
「収納魔法が掛かっているのよ。見た目通りじゃないわ」
「少し大きめを出しておいたよ」
「そうね、ひと月も経たないうちに調度良くなるわ」
体力がついたら働いてもらうつもりだけど、搾取つもりはない。しっかり食べて遊んで、そうしたらきっと直ぐに身体が大きくなる。
「これで良い?」
好きに選べと言ったら、二人ともおずおずと一番シンプルで安そうな服を指す。
残念、それは簡易とはいえ防護魔法がかかった品で、旅の装束にもなる優れモノ。
つまりお高い。
「目が高いね! 将来有望だ」
呵呵と店主が笑って子供たちを褒めた。
実は出された中で一番高価な服なのだ。
魔女の実入りは良いから、全然気にならないけどね!
「この場で着替えちゃいなさい」
入口は施錠してあるから、人が入ってくる心配はない。
もっとも魔女の村は小さくて全員が顔見知りだ。もし行商人や旅人がいたとしても、この村で不埒なことを犯すような阿呆はいないけど。
エセルバートが手早く着替えると、少しもたついたメイベルに手を貸してやる。
まるで優しいお兄ちゃんだ。微笑ましい。
「いらないわね?」
今まで着てきた服を摘まんで持ち上げる。
うん、とばかり二人の頭がコクコクと動く。
「じゃあ……」
一瞬で燃やし尽くす。服屋が声を上げる隙もなく、灰の一欠けらも残さないで。
「洗い替え用のはどれが良いかしら?」
にっこりと微笑んで、二枚目を選ぶように言うけど、魔法の火が恐ろしかったのか、今度はブンブンと横に頭を振る。
「仕方ないわね。じゃあ私たちで選ぶわね?」
女の子らしいヒラヒラな桃色や向日葵みたいな黄色の服と、男の子らしい空色や若草色の服を何枚か。
大人二人であーでもない、こーでもないと言いながら選んでいたら、気持ちが落ち着いたのか、少しずつ目の輝きが増してきた。
良い傾向だ。
私は満足して……子供たちも満足そうな笑顔を浮かべる。取敢えず五枚ずつ買って店を出た。
「自分で持ちたい」
「わたしもー」
ぎゅっと服の入った袋を持ちながら言うから、重量軽減の魔法をかけた。
いくら布は軽いといっても、何枚も買ったら重いから。
次に八百屋、肉屋と巡って、次々と籠の中に食べ物を放り込む。「ご馳走だねえ」と言われたけど、子供はたくさん食べるイキモノなのだ。大量に買っても、きっと一日で食べつくすハズ。
最後に別の店の前に立った。
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