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――二人、殺した。
一人目は、十六歳の高校一年生の時だった。
担任クラスの生徒だった俺との不倫がタレコミで公になって、家庭からも職場からも追いやられて追い詰められ、学校の屋上から飛び降りた男性教師。
綺麗に揃えられていたらしい靴と、家族への謝罪と俺への愛と謝罪を綴ってくれた遺書。
『ごめんね』と書かれたあの文章を、俺は一生忘れないだろう。
飛び降りた瞬間を見たわけではないけれど、俺は未だに彼が飛び降りて行ったであろう背中の映像の夢を見る。
二人目は、十八歳の高校三年生の時だった。
三つ年上の大学生だった彼は、男性教師を自殺させてしまったことを親身に相談に乗ってくれた家庭教師。
自然と付き合いは深くなり、家の外でも会うようになってすぐに、青信号で渡っていたところに突っ込んできたダンプカーから俺を突き飛ばして守って跳ねられた。
地面に染み入るおびただしい血液と、変わり果てた彼の倒れた映像の夢を見る。
俺と付き合った人は漏れなく死んでしまった。
同性しか愛せない俺が心底愛する人は、二人とも死の淵に追いやられて行った。
だから、俺はもう誰も愛してはいけなくて、誰のことを不幸にもしてはいけない存在なのだと理解したつもりだ。
俺という疫病神はこの世から消えるべきかと思い悩んだ時期もあったけれど、醜い俺は浅ましくも生にしがみついている。
幸せは求めない代わりに、命だけは許してくれないだろうかと。
臆病で弱虫な俺は死んで償うことも出来ない。
せめて、もう二度と誰も愛さないから、生きていることだけは許してはくれないだろうかと。
〝孤独〟という枷をはめて生きていくから、それで償いにならないだろうかと。
そんな自分勝手なハンデを背負ってみても、許されないことはわかっているけれど、どうかそれで許してもらえないだろうかと。
犯した罪は俺が一生独りで償っていくつもりだから、もう誰も不幸にしないように頑張るから。
けれど――。
いつか俺の〝疫病神〟を振り払って愛してもらいたい――そんな弱さを抱えている自分も誰かに許されないだろうか。
叶いもしない望みを抱えたまま俺は生き続ける。
どこまでも、どこまでも真っ暗な闇を通りながら。
そこで、闇の先にたった一人の偉大な男性が光を灯してくれるようになるだなんて、思いもしていなかったんだ。
ずっと独り――。
その絶望の底から俺を引きずりあげてもらえるなんて、微塵も思っていなかったんだ。
また、誰かを愛せる日がくるなんて――。
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