2 小さな乃木くん

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2 小さな乃木くん

 次の日の放課後、そっと松の木の下を見てみると、芽が生えているのを見つけた。昨日付箋を埋めた場所に間違い無いけれど、昨日までは何も生えていなかったはずだ。驚いたあたしは、しゃがみ込んでじっくりと芽を見てみる。  すると、パチンっと弾ける音がして、一瞬だけ眩しい光に目が眩んだ。  芽が膨らんで、蕾になって、今にも花が開きそう。ドキドキワクワクしながら見守っていると、ゆっくり開いた花びらの中に、小さな乃木くんの姿があった。体育座りをして、こちらを見上げている。  な!? なにこれ!?  驚いて声の出ないあたしと同様に、小さな乃木くんも長い前髪から少しだけ見える目がまんまるに見開いている。 「のっ!?」  思わず大きな声が出そうになって、あたしは口に手を当てて辺りを見回した。  近くには誰もいない。 「の、乃木……くん?」  まさかと思いながら小声で尋ねると、コクコクと頭を上下させて頷いているから、驚く。 「な、なんで、小さくなっちゃってるの?」  疑問と不安が入り混じりながら、あたしはそっと聞く。 「……分からない。昨日、長野さんがここで何かをしているのを見かけて、この場所を見たんだ。そしたら、急に眩しい光に目が眩んで、気が付いたら花の蕾の中に、閉じ込められていたんだよ……」  今にも泣き出しそうな弱々しい声で、乃木くんが教えてくれた。 「どうしよう、僕、ずっとこのままなのかな……」  諦めにも似た言葉に、あたしはグッと拳を握った。 「あたしが、なんとかしてあげる!」 「……え?」 「あたし、いつも乃木くんに助けてもらってるから、だから、今度はあたしが乃木くんのこと助けてあげたい」  ずっと、なにか恩返しがしたいと思っていたから。 「え! で、でも、一体どうやって……」  おろおろと俯いてしまう乃木くんの背中。よく見ると、なにか背負っているのが見えた。 「乃木くん、それってなぁに?」 「え?」 「ほら、背中になにか背負ってない?」  刀の鞘みたいな、巻物みたいな……  泣きそうな目元を拭うと、乃木くんはすぐに背中に手を回して、背負っていたものをあたしに差し出して来た。 「なんだろう?」
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