2 小さな乃木くん

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「見ても良い?」  渡されたのは、クルクルと巻かれた紙のように見える。乃木くんが頷くのを確認した後に、破いてしまわないようにゆっくり開く。 『理想の人に育てる極意』  ……ん?  一行目に現れたタイトルみたいな言葉に、一瞬動きを止めた。そしてすぐに、全貌を知りたくなって一気に長い巻物状の紙を開いた。 「なにか、書いてあるけど、読むね?」  乃木くんに確認を取ると、不思議そうに首を傾げた後に頷くのを見て、あたしは読み上げた。 「理想の人に育てる極意 その一、会話は相手の目を見てはっきりと その二、感謝は言葉にする その三、長い前髪は程よく整える その四、背はすぐ伸びる その五、さあ、ゆけ」  読み上げたは良いけれど、全くもって意味がわからない。 「どういうこと?」 「……」  あたしの問いかけに、乃木くんは俯いて困っているばかりだ。あたしだって困ってしまうって言うのに。と、言うか、このまま乃木くんを置いては帰れないよね? 「……乃木くん、もしかして、昨日から家に帰ってないの?」  今日、彼は学校に登校していなかった。たぶん隣の席のあたしくらいしか彼が休んでいることに気づいていないんじゃないかと思うくらいに今日も彼の存在感はなかった。 「……帰ってないと、言うか、帰れないよこんなんじゃ……」  うう、とついに泣き出してしまった乃木くん。
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