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3 理想の人になる極意
「ねぇ、乃木くんのご両親は? 心配しているよね? 家に帰ってこないなんて。もしかしたら警察に捜索願いとか出しているかも」
不安になってきたあたしに、乃木くんは涙を拭って首を振った。
「両親は、昨日から海外出張で……家には居ないんだ。僕がいなくなっているのは、気付いていない……と、思う。小さくても、スマホは繋がったから……でも、こんなことになってるなんて、言えなくて……」
俯いたまましどろもどろに話すから、ものすごく心配になってしまう。
「とにかく、あたしと一緒に解決策を考えよう!」
「え!」
「なんか、元を辿れば、あたしがここに付箋を埋めたせいかもしれないし」
「……え? それって、どう言う……」
付箋を埋めたのは何故か、なんて聞かれたら、理由は一つだけしかない。乃木くんから告白されたいと思ったからだ。でも、そんなこと言えない。
だけど、こんなことになるなんて。あたしに責任があるような気がしてならない。
「とりあえず、この、巻物に書いてあることを実行してみようよ」
「……う、うん」
意気込むあたしに、乃木くんは不安そうな顔をしつつも頷いてくれた。
カバン脇のポケットに入ってもらって、急いで家に帰った。
玄関から中に入ろうとすると、いつもお昼寝しているはずの犬のシロタが、威嚇するように「うううーっ」と睨んできた。乃木くんの匂いに反応しているんだと思って、カバンをギュッと抱えて急いで家の中に入った。
自分の部屋に入ると、散らかっていたテーブルの上を片づけてから乃木くんを取り出して、そっと置く。
「……犬、こわっ」
顔面蒼白で座り込む乃木くんに、あたしは笑う。と、言うか、小さいとはいえ乃木くんがあたしの部屋にいるって、なんか変な感じだ。
どうしよう、なんかドキドキしてしまう。
落ち着かないドキドキを抑えつつ、あたしは乃木くんの前に座って、先ほどの巻物をテーブルに広げた。
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