プロローグ

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プロローグ

 タミアは、腕の中の赤ん坊をじっと見ていた。  腕にはおくるみにくるまれた赤ん坊の温もりが伝わり、赤ん坊と同じ匂いがした。 「ドクター、本物の赤ちゃんにしか見えないわ」  と、母親になったばかりのタミアは言った。 「そうでなければ困ります。90%同じですから」  と、ドクターが言った。  90%・・・と、タミアは口の中で呟く。顔を上げ、ドクターを見る。 「その10%の違いはなんですか」  ドクターはタミアの目をじっと見つめ、静かに言った。 「たいした問題ではありません。その違いに気づく人もいれば、気づかない人もいる。10%のことなど気にしないことです。本物の人間の赤ん坊と思っていれば、それでいいんです」  2035年、法律が改定され、AIが搭載された赤ん坊、通称、AIエンジェルが、条件を満たすことで、人間と同じような権利を与えられるこが法的に決まった。  タミアは子宮に問題があったため、子どもを作ることができなかった。AIの赤ん坊が認可されることをこの10年、待ち続けていたのだ。  そしてそれがやっと法的に認められ、タミアは自分と夫のリチャードの遺伝子を持つAIエンジェルを迎えることが出来た。  AIエンジェルは、世界ではまだ数例だった。タミアの夫は政府の重要なポジションについており、父親は資産家だった。  そんな理由もあり、優先的に権利を得ることができたのだ。

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