サンダル

「あのー、その子抱っこさせてもらっていいですかね？」

昨日のおじさんだった。

涙がじゃんじゃん流れてきた。
おじさんの胸の中でえんえん泣いた。
連れて帰ってください
お願いします、お願いします

　キャップを被り、カーキ色のジャンパーにジーンズにサンダル！サンダル？！のダサダサコーディネートのおじさんはぎこちなく私を抱っこして、微動だにせずに、首だけギギギって音がしそうに店員さんに向けて、
「下さい」
って言ってくれた。

「はい、はい、そうですか、じゃあそれも」
店員さんの言いなりでどんどん買ってる。
そんなにおもちゃたくさん要らないよ！と思うけど、要るか？っていちいち嬉しそうに聞くから、要らなくもないから全部買ってもらった。

　おじさんの家は海辺の町から遠かった。車の後部座席に乗って着いたの場所はもう海の匂いはしなかった。