お家

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お家

 おじさんは私をお家に連れて入ってくれた。お庭のある一軒家。 家族がいるのかと思ったんだけど、一人暮らしらしい。  小さな箱があった。おじさんのお父さんが入ってるって、木の板を見せてくれた。ずいぶん薄っぺらなお父さんだ。  おじさんは、その薄っぺらなお父さんのいる箱に、ミニミニご飯とお水を毎日あげてる。大事にしてる。まあ私の次にだけどね。 だから来てすぐちょっとパニックになって大騒ぎしたときも、この箱だけは避けてあげた。   「仏壇だけセーフで良かった。えらいぞ!」 おじさんは雑巾であちこち拭きながら褒めてくれた。 それほどでもないけどね。 あと、お姉さんになったから、そこまではもうやらないけどね。  やらないって言ってんのに、広い家は全部私のものだって、おじさんは6畳のお部屋に大事な物を全部詰め込んだ。   サロンには月2回。お散歩は朝とおじさんが帰って来てからと、夜寝る前の3回。幼稚園の先生も月1回来てくれる。 おすましして先生の言う事はきちんと聞くの。 「……ちゃんとできるのに、なぜ俺にはそんな態度?」 困惑してるおじさんの顔を見て 「やりゃあできるところを見せてあげてるのよ」 ってふんってすると 「まったく、やれやれ」と言いながら笑ってる。
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