夏美の本音

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 俺は目の前にいる男を睨んで話した。 「おまえ、俺の代わりに夏美と結婚まで進めたらしいな」 「はい。全てはあなたのためです」  男は柔和な表情を浮かべていた。 「なんで、俺の代わりに夏美にそこまでさせたんだ?」 「あなたは私を救ってくれた恩人です。あなたに幸せになって欲しくて。その一心で仕組みました」  俺はため息を洩らした。 「でも、そこまでしたら夏美が好きなのは俺じゃなくて、偽物のおまえなんじゃないか?」 「大丈夫です。夏美さんと結婚を挙げてください」  俺は俺の偽物を訝しんでいたが、本当に夏美と結婚できた。  結婚してから数か月後、俺は持病が再発して、あと幾許かの命になった。  俺は夏美に病床で尋ねた。 「なんで俺と結婚してくれたんだ? おまえは俺の偽物が好きだったんじゃないのか?」  夏美が今まで見たことがないほど笑顔で応えた。 「私、あなたが偽物を使って私と結婚しようとしてたのは知っていたの。私が結婚したのはあなたでも偽物でもなく、あなたの底知れない財力よ。あなたの余命が短いことも知っていたの。これで莫大な遺産は私のものよ」  俺が最期に聞いたのは夏美の悪魔のような笑い声だった。
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