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あれから十年……
この日をずっと待っていた。
私は静かに口を開くと彼等に言った。
「だって……
私は、あの日遊園地からあなた達に
連れ去られ育てられた。
今までずっと自分で行動を起こす
機会を探していた。
あなた達は私を本当の子供のように
育てたつもりでしょうけど、
私は、いつかこの場所から逃げ出す
ことだけを……
お父さんとお母さんのもとに帰る、
『希望』を心の中で育てていたの」
私はそう言うと、三人掛けのテーブルに
手をつきゆっくりと立ち上がった。
そして……
「いままで大切に育ててくれて……」
と呟き玄関のドアを開けた。
外には、数台のパトカーと大勢の警察官が
私を保護するために家中を取り囲んでいた。
~ 育て……たのに 完 ~
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