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8)貴方が、見えない
「田中~、富永~、中野~……中野 狼はまた休みか!?」
狼が学校に現れることなく2日が過ぎた。
学校にも連絡が無いようで、担任教諭は声を荒げて狼の不在をぼやいた。
「中野は無断で欠席するような奴では無いんだがなぁ~。」
頭をボリボリと掻きながら、教室を出て行く教諭。
出て行く間際の呟きに、キリリと胸が痛んだ。
あの時の狼の涙…
別れ際の笑顔…
「そんなこと…言うな」という言葉…
それから、急に居なくなった狼。
狼の身に何か…あったのだろうか。
だけどそれなら何かしら連絡があるはず。
何の音沙汰もないのはもしかしたら…
「中野、今まで相手してきた奴等全員にボコされたらしいぞ。」
「え?!俺は遂に喧嘩の相手を半殺しにしちまってパクられたって聞いたぞ?」
クラスの男子が根も葉もないことを話している。
だけど…私も喧嘩に巻き込まれて――というのは考えていた。
狼は…自分の身に何かが起こることが、分かっていたのかもしれない。
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