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「玲央くーん!」
ニコニコとしている玲央の後ろから、近付いてくる人影。
人影の正体は可愛らしい女の子。
女の子は軽やかに走ってくると、玲央の腕を掴んだ。
「…莉奈。」
「玲央くん、早く教室に行こっ!」
莉奈と呼ばれたその子は、可愛らしく言いつつも私を睨む。
彼女は玲央が私と仲良くするのが気に入らないようで、私はよく彼女に睨まれていた。
まぁ…
私も彼女の立場であったならば、彼女のようにしていたかもしれない。
彼女の立場――玲央の“彼女”。
私が欲して止まない、その立場。
だけど私がどれだけ欲したとしても、手にはいることはないから。
「あ…ごめんなさい。私、もう行くね。」
現実から逃げるように、彼女の睨みから逃げるように。
私は玲央と彼女に背を向け、歩き出す。
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